フォルクスワーゲンの代表的なフロントローターサイズは288x25mm、312x25mm、340x30mmですが、Sharan(7N)では314x30mmという他ではあまり使われないサイズが装備されています。
作り手側からすれば既存のサイズを採用した方がコスト面では良いはずなので、今回はなぜ314x30mmというサイズを装備(採用)しているのか、その理由を構成部品などから考えてみたいと思います。
(以下は個人の考察による感想を含みます)
Sharan(7N)のフロントローターは他の車種よりも波を打ったような状態になっている頻度が高いと思います。
ローターの変形は運動エネルギーを熱エネルギーに変換する際の熱の影響が大きく、普通に走行していても車重が重いSharan(7N)は厳しめのブレーキ環境であることが推測できます。
Sharan(7N)の車重が1800~1900㎏に対し、Touran(5T)の車重は約1600~1700㎏と200㎏程重いのですが、フロントローターのサイズはSharan(7N)が314x30mm、Touran(5T)は312x25mmと外径はほぼ同じで厚みが増した仕様となっています。
なお、運動エネルギーは1/2x車重x(速度の2乗)となるため、重い車両や速い車両を止めるにはより多くの熱エネルギーへの変換が必要になるため、ローターやパッドを大きくすることで熱容量や放熱性を高めて対応しています。
314x30mmで歪みが大きい状況では、径が小さくて薄い312x25mmは熱容量や放熱性でもっと厳しくなってしまいますので、既存のサイズであれば340x30mmを採用したいところです。実際にフロントのブレーキパッドはGolf7 Rなど、340x30mmローターで使用されるブレーキパッドと同じ形状が採用されていることからも窺い知ることができます。
ではなぜ340x30mmローターが採用されなかったのかを考えるとホイールサイズとの兼ね合いが考えられます。
340x30mmローターを装備させるには17インチ以上のホイールが必要となりますが、Sharan(7N)ではグレードによっては16インチホイールが装着されています。
Golfのようにグレードによって異なるブレーキシステムを採用して小さいサイズのホイールの装着を可能にしている車種もありますが、コスト面等の観点からでSharan(7N)は一つのブレーキシステムで展開する必要があったと仮定すると、16インチホイールの装着が可能なローターサイズが必要であり、そこで誕生したのが340x30mmからの部品変更を最小限に抑え、ブレーキ容量としても不足が無い(余裕があるかは別)314x30mmという特殊なサイズだったのではないかという考えです。
であるならば、340x30mmが装着できる環境(17インチ以上のホイール装着車両)であれば、その方が熱容量や放熱性に余裕ができ、ブレーキローターにかかる負荷を軽減できる分、交換サイクルの長期化も可能になるはずとの考えから、COXではサーキット走行をしないSharan(7N)であってもブレーキパフォーマンスのアップグレードは十分なメリットがあると判断し、見た目の派手さはありませんが、コストとメンテナンス性に優れた内容で340x30mmに大径化できるキットをご用意しています。
なお、COXカスタマーセンターでは、ブレーキローターやブレーキパッドなど、ご予算に応じてWebサイトには掲載していないスペックでのご提案も可能ですので、装着しているブレーキローターの歪みが多い方、高速道での走行や人や荷物を載せて走行する機会が多い方などは、是非一度お問い合わせください。
■COX Front Brake Rotor 314⇒340mm Conversion Kitの製品特徴
・キャリパー(ブレーキパッド形状)を変えずにローター径をサイズアップ
・340mmローターは純正同サイズを使用
・構成部品が純正同形状
⇒専用形状のブレーキパッド/ローター/部品を必要としません。=消耗品交換時の部品入手が容易です。
◆組合せ可能なブレーキローター/ブレーキパッド
・ブレーキローター:⇒プレーン / DBA T2スリット / DBA T3スリット / DBA T3スリット 2ピース
⇒ローター自体をより耐熱性/耐久性の高いものに交換することで歪みの低減(ロングライフ化)が可能です。
・ブレーキパッド:⇒低ダスト / 制動力強化タイプ / レーシング
⇒パッド自体のパフォーマンスを上げることで制動力の強化が可能です。
◆デメリット(人によってはメリットの場合あり)
・16インチホイールの装着不可(17インチ以上のホイールが必要になります(推奨は18インチ))
・替えた感が全くない ※替えた感を出す方法もご予算に応じたご提案が可能です。
■ブレーキローターの交換(サイズ変更なし)だけでパフォーマンスアップしたい場合
◆COX Street Brake Rotor by DBA (T2:Front 314×30) に交換。
※314x30mmにはRacing(T3)の設定はありません。
・T2スリット:
32本のカービングスリットを特定の方向に整列させることでストレートスリットで発生しやすい振動周波を吸収し、静粛性を高めるとともにパッドから発生するガスを逃がすポイントを増やすことで、常に高い制動力と安定性を維持します。(特許取得済み)
ドリルドタイプに比べてヒートクラックが発生しにくく、長期間パフォーマンスを維持します。
回転方向に影響されないスリット形状なので左右で同じ当たり方になります。
・カンガルーポウ:
DBA社が開発したカンガルーの足跡に似た 特許取得済みベンチレーションシステム。
144個のダイヤモンド形状とティアドロップ型ピラーは従来のストレート型より約20%の冷却効果向上を実現し、過酷なブレーキングにおいてもローターを効果的に冷やします。
カンガルーポウはローター面に均一に配置されるため、通常のストレート形状より高温下での膨張収縮の偏りが抑制され、歪みの発生を最小限に抑えます。